2022年5月の健康便り —メンタル—

電車が怖い~こんな時どうしたら~

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 健康管理センターの相談室に電話をかけてきた大学2年生の岡田静香さん。これまでも友だち関係で悩んで、時々相談室に来ていた学生です。
 「キムラさん、わたしこのままでは大学に通えません…」岡田さんの声は震えています。いつもと違う様子にキムラさんは身を正し、事情を聴きました。「1ヵ月くらい前、満員電車で気分が悪くなり、車内でしゃがみこんでしまいました。幸い大事に至らず、落ち着いたら気分も回復したので、その時は気になりませんでした。ところがそれからずっと、家を出ようとすると急に不安になってしまって、駅まで行っても電車に乗れないんです。『また、電車の中で気分が悪くなったらどうしよう』そう考えるとドキドキして冷や汗が出てきます。電車に乗るのが怖い…」岡田さんは涙声で言いました。
 キムラさんは一呼吸おいて話し始めました。「それは大変でしたね。怖い体験をすると、また同じことが起こるのではと不安感が出たり、起きた場所を避けようとしたりするのは、身を守る反応なのだと思いますよ。なぜ具合が悪くなったのか、思い当たることはありますか」
 岡田さんは課題が重なって夜遅くまで勉強していて寝不足だったこと、今も寝不足が続いていると答えました。

 「それでは、まずはしっかり休んで体調を整えましょう。睡眠、栄養のある食事、そして適度な運動で体を動かしましょう。体を動かすことで不安を生むネガティブ思考やストレスをコントロールするセロトニンが分泌されることがわかっています。気分をリラックスさせる方法を見つけておくのもいいですね。好きな音楽を聴く、アロマの香りを使うのもいいかもしれません」岡田さんはホッとした様子になり、「今は休んでいてもいいんですね。新学期になってからちょっと焦ってしまっていました」と言いました。 
 キムラさんは続けます。「体調が整ってきて、気持ちが落ち着いたら、次は通学に向けて練習してみましょう。手助けになるもの(本や音楽、好きな香りのグッズなど)を持っていくのもいいですね。まずは、電車が空いている時間に乗ってみるのはどうでしょうか。はじめは誰かと一緒に行動できると安心ですね」岡田さんは、「家族にも相談してやってみます」と少しだけ明るい口調になりました。

 キムラさんは、不安な状態が続く場合は、精神科や心療内科などの専門医に相談してよいこと、専門医と相談しながら、服薬や、段階を踏んだ行動療法などの対処法があることを言い添えました。
 「いつでもまた連絡してきていいですからね」と伝えて、電話を終えました。