2022年7月の健康便り —メンタル—
大学3年生の石井孝太郎さんは、サークル内の人間関係に悩んでいました。中学、高校と似たようなことで悩んできた過去がありました。今こそ自分を変えたいと思い、健康管理センター相談室のキムラさんのもとへやって来ました。
「みんなが談笑していたり、会話が弾んでいたりするのを、少し緊張しながら眺めています。勇気を出して話の輪に入ると、途端にみんながシーンとしてしまうんです。一体どうしたらいいのか、よくわからないまま自信を失ってしまい、サークルに行くのが苦痛だと感じるようになってしまいました」
石井さんは小学校卒業までは明るい性格だったと言います。しかし、次第に周囲と円滑にコミュニケーションが取れていない自分に気づき、引っ込み思案になっていきました。
「何が原因でみんながきょとんとするのか、その場のその瞬間は自分自身では全く分からないんです。後で一人になった時に振り返ってみると、自分のあの言動が原因だったなと分かることもあります。でも、原因が分からないこともあります。友達に『孝太郎、空気読めよ!』と笑いながら言われても、なんでそう言われたのか分からなくて、『僕って空気読めないのかな…』と考えるようになりました。ネットで調べたら、発達障害というのに当てはまる気がしてきて」
石井さんは自分が発達障害ではないかと考えているようです。
「石井さんが一人で振り返って原因が分かった時というのは、具体的にはどんなことが原因だと感じたんですか」とキムラさんは尋ねました。
「簡単に言うと、みんなが話していた話題ではなく、自分が話したい話題を切り出してしまうんです。それと、一度話し始めるとなかなか止められなくて、一気にバーッとしゃべってしまうこともよくあります。そうすると、みんながシーンとしてしまいます」
キムラさんは「なるほど。そういう時にはどう振舞えばいいと思いますか」とまた尋ねます。
「それが分からないんです。みんな、楽しそうにしゃべっているのに、自分はどうしたらあんな風になれるんだろうって苦しいんです」 と気持ちを吐露しました。
「それは辛いですよね。確かに、石井さんにはもしかしたら発達障害の傾向があるのかもしれません。実は発達障害の傾向自体は人間誰しも持ち合わせていると言われていて、その傾向が濃いのか薄いのかの違いでしかないと言われています。誰でも『空気が読めない』瞬間はあるのです。石井さんは傾向が少し濃いのかもしれません。だから『空気が読めない』ことが多いのでしょう。ただ、石井さんは原因にも気づき始めていますよね。仮にその傾向があったとしても、少しずつ改善していくことができると言われています。これから一緒にどう振舞えばいいのかを具体的に考えていきましょう」とキムラさんが優しく受け止めます。
石井さんは抱えていたモヤモヤが少し晴れてきた気がしていました。これまで一人で悩んできたことを誰かが一緒に考えてくれると思うと、心強さも感じていました。