2022年9月の健康便り —メンタル—

気持ちを吐き出す大切さ

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 大学3年の森永直人さんは、友人がSNSに投稿した内容が気になっていました。名指しこそありませんが、森永さんのことを茶化しているような内容だったためです。直接友人に聞くことができず、気になりだしてからその友人との会話を避けてしまう自分に気が付き、イライラを感じていました。
 ある日、校内の掲示物にあった健康管理センターのポスターに「気軽に話しにきてください」という言葉を見つけた森永さんは、誰かに話を聞いてもらいたいという思いから、勢いで電話をかけたのでした。
 電話を受けた相談室のキムラさんは、ためらいながら事情を説明する森永さんの話を静かに聞き続け、「よければ相談室でゆっくり話を聞かせてほしい」と伝えました。個人的な人間関係の悩み、しかも、よくある些細な出来事程度の話を受け止めてくれたことに森永さんは戸惑いを感じました。でも、聞いてもらえばすっきりするかもしれないと思い、キムラさんからの誘いに応じたのでした。
 キムラさんとの面談は、人に嫌われることを避けたい、人の本心を知るのが怖い、本心では気の置けない友人が欲しいと思っているなど、意識していなかった自分の気持ちを確認するきっかけとなりました。また、想像を膨らませて不安を増幅させてしまうとか、見たくないものをわざわざ探して見てしまう癖があることにも気が付き、驚きを感じました。
 面談をしたことでイライラの原因そのものが解決したわけではありません。それでも自分の気持ちを話したことで、肩がすっと楽になるのを感じていました。
 森永さんは「どうしたら解決できるのかな」とキムラさんに聞いてみました。キムラさんは少し考えてから「その友人に直接聞いてみますか?」と森永さんの意志を確認します。
 「正直なところ、もう放っておいてもいいのかなと思うんです。自分の受け止め方次第ってこともあるだろうし、今更掘り返してもいいことがない気がするんです。あら捜しみたいなことはやめようかな」
 森永さんは、自分自身の口から出てきた言葉に驚き、「話を聞いてもらうってすごい効果ですね」とポツリと言って笑いました。キムラさんは「森永さん自身が自分と向き合った結果ですね」と笑顔で答えました。

 ある日、相談室にまた一人の学生が訪ねてきました。「友人から、話すと楽になるから聞いてもらっておいでよと言われて…」という彼は、家族のことで悩んでいて夜眠れない、と語りました。彼に相談を勧めたのは森永さんでした。キムラさんは目の前にいる彼を相談室のソファーへと案内しながら声をかけました。
 「よければ話を聞かせてもらえますか?」