2022年11月の健康便り —メンタル—

誤解から生まれる「ぼっち」

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 学食で昼食をとりながら、大学3年生の山田伸一さんは同じゼミに所属する宮城和也さんのことを考えていました。キャンパス内ですれ違う時はいつも笑顔で声をかけてくる宮城さんが、今朝は何も言わず、うつむき加減で山田さんの前を通り過ぎた様子に違和感を覚えたのです。
 宮城さんについて気になることは他にもあります。テニスサークルに入っている宮城さんはサークル仲間と一緒にいることが多かったのですが、このところ仲間から離れて一人で過ごしている姿が目立ちます。心配になった山田さんは、その日の講義終了後、ちょっと話しかけてみることにしました。

 「何かあった?」帰り支度をしている宮城さんに声をかけると、ポツリポツリと話し始めました。
 「企業のインターンシップやアルバイトが重なって、近頃サークルに参加できていないんだ。他の仲間はちょっとだけでも顔を出していたみたいで、自分だけがサークルのことをないがしろにしているように思われてしまったんだよ。そんなことがあってからサークルの仲間と一緒にいるのが辛くなってしまって…」
 事情を理解した山田さんは、「そうなんだ。辛かったね。すごくしんどいなら、健康管理センターの相談室で話を聴いてもらったらどうだろう?」

 後日、電話で予約した時間にきちんと到着した宮城さんを、相談室のキムラさんは優しく迎え入れました。キムラさんは落ち着いた様子で宮城さんの話に耳を傾け、サークル内の人間関係だけでなく、大学生活全体や将来に関することなどについても宮城さんと一緒に確認していきます。
 キムラさんとの面談前はサークル仲間とのトラブルのことばかり気になっていた宮城さんですが、自分の考えを言葉にしてキムラさんに伝えることで「サークル活動はとても大切だけど、今はインターンシップやアルバイトを優先しなければならない」と整理でき、頭の中のモヤモヤが晴れたような気持ちになりました。
 宮城さんは「サークル仲間には自分の気持ちをしっかりと伝えてみます。自分と同じような経験をしたことがないか、4年生の先輩にも相談してみようかな」などと話し、「ありがとうございました!」とすっきりとした表情で相談室を後にしました。