2022年12月の健康便り —健康—

飲まずにはいられない…、アルコール依存症!?

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 大学4年生の今野優子さんはコロナ禍で自粛中の楽しみはお酒を飲むこと。以前は夜に飲むだけでした。でも今はイライラしたり、気分が落ち込んだりしたときに、お酒を飲むと落ち着くので朝からお酒を飲んでしまいます。学校にも行けなくなりました。卒論で大事な時期なのに学校に来ない今野さんを心配したゼミの教授から、健康管理センターの看護師モモセさんに、今野さんがアルコール依存症になってしまうのではないかと相談がありました。モモセさんは今野さんに話を聞いてみることにしました。

 最近は若者が酒離れしていると言われ、飲酒による事件・事故数も減少傾向にあるようです。急性アルコール中毒はサークルの飲み会などで起こることが多く、脳がお酒に慣れていない状態で一気飲みなど危険な飲み方をすることで起こります。
 一方、アルコール依存症は、多量のお酒を長期にわたって飲み続けることで、お酒を飲まずにいられなくなる状態です。女性のアルコール依存の増加率は男性を上回っており、特に若い女性で危険なお酒の飲み方をする人の割合が増えています。
 習慣的な飲酒でお酒の量が増えていくと、「お酒を飲まないとリラックスできない」「飲まないと眠れない」などの症状がでてきます。アルコールを摂取している状態が通常になると、アルコールが身体から抜けた時に、イライラする、眠れない、手の震え、動悸、幻聴・幻覚などの離脱症状がでるようになります。離脱症状を抑えるためにアルコールを摂取することで、さらに依存が強くなり悪循環となるのです。
 アルコールの大量摂取は身体に様々な影響があります。肝炎や肝硬変、糖尿病、骨粗しょう症、うつ病、アルコール性認知症などの合併症を伴うこともあります。学校や仕事が続けられない、家族や友人が離れていくなど、社会生活が破綻し、孤立してしまうこともあるのです。孤立による寂しさを酒で紛らわすようになると、症状がさらに進行し、心身ともに疲弊、最後は死に至ることもある怖い病気です。
 アルコール依存症は、本人の意志が弱いためにお酒を飲んでしまうのではなく、精神的にも身体的にも依存が生じて、飲酒を止めたくても止められなくなってしまうのです。治療には断酒が必須ですが、本人の力だけでは難しいので、専門機関や自助グループなどの力が必要です。まずはお住まいの自治体の保健所や精神保健福祉センター、精神科病院などで相談してみましょう。

 「飲み過ぎだとわかっていても、お酒を飲む量を減らせなくて。だめな自分を責めていました」と今野さん。モモセさんは「お酒を止められないのはあなたが悪いからではないのよ。一緒にお酒を止める方法を考えていきましょうね」と優しく声をかけました。