2023年2月の健康便り —メンタル—

スマートフォン症候群で抑うつ状態!?

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 「こちらで相談ができると聞いたのですが」と、疲れた表情で健康管理センターに入ってきたのは、大学1年生の小田麻衣さんです。相談室のキムラさんは、小田さんの力のない声や服のしわが少し気になりながら、「どうぞ、なんでも話してくださいね」と優しく声をかけました。

 「最近、授業に集中できないし、やる気が起きないんです。友達から誘われても出かける気になれずに断っています。イライラして家族にもきつい言い方をしてしまうし、何だか自分が自分じゃないみたいで…」
 「でも、大学に入ってからSNSのフォロワーが増えて、毎日投稿は頑張っていました」と、たくさんの写真の投稿をキムラさんに見せてくれました。そこには快活そうな小田さんが写っています。
 「フォロワー数が多いんですね」とキムラさんが言うと、小田さんは困惑気味な面持ちで話します。「はじめは投稿に“いいね”をもらえたり、フォロワー数が増えたりしていくのは嬉しかったんです。でも、私からも相手の投稿にすぐにコメントを送ってあげないといけないと思うと、常にSNSから目が離せないようになってしまって。夜中も通知音が鳴ると気になってよく眠れなくなり、最近はチェックがつらいと感じるんです。朝は一番気分が落ち込むのですが、何とか授業だけは休まないで頑張っています」
 「睡眠も足りていないのでは、疲れてしまいますよね」キムラさんは心配そうに小田さんを労わり、抑うつ状態について説明しました。

 抑うつ状態とは心のエネルギーが低下し、気分が落ち込んで何もする気になれない、憂うつな気分が持続している状態です。意欲や集中力の低下、睡眠や食欲の変化、倦怠感や疲労感の他、自尊心の喪失や心にぽっかり穴が開いたような感覚になるなどの心理的な影響が生じることもあります。スマートフォンの長時間の利用が脳への刺激となり、脳疲労、睡眠障害、イライラ、不安感などを引き起こすこともあるのです。

 「思い当たります。人のSNSの投稿を見続けているうちに自分がみじめな気分になったり、落ち込んだりすることも多くて、しんどくなっていました」と小田さんは苦しい気持ちを話してくれました。
 そこでキムラさんはこう提案してみました。「スマートフォンとの付き合い方を少し見直してみませんか。まずはSNSをチェックする時間を決めてみることから試してみるのはどうでしょう?」また、抑うつ状態改善の対処法として、寝起きに朝日を浴びる、軽い運動をする、読書やカラオケなど自分に合ったストレス解消法を見つけるとよいことも伝えます。
 「SNSに依存しない時間の過ごし方が大事なんですね」と、小田さんは少し晴れやかな表情を浮べて相談室を出ていきました。