大学1年生の渡辺優子さんは、今ダイエットに励んでいます。自分と同じ身長なのに10㎏も軽い体重の女の子が理想体型だとSNSで紹介されていたのがきっかけです。徹底した食事管理とジム通いで、ようやくSNSで紹介されていた子と同じ体重になりました。でもまだ満足できません。急にやせて、怒ったり泣いたり、精神的に不安定な様子の渡辺さんのことを一緒に住むお母さんは心配していましたが、どこへ相談したらよいのかわかりません。そこで、お母さんは渡辺さんを連れて大学の健康管理センターに行きました。
シンデレラ体重という言葉を知っていますか。シンデレラ体重とは身長(m)×身長(m)×18で計算された体重を表します。それが理想の見た目だとSNSで話題となり、シンデレラ体重を目指してダイエットする若い人が多いと言われています。一方、健康体重は身長(m)×身長(m)×22の計算で求められる体重です。身長160cmの場合、シンデレラ体重は約46kg、健康体重は約56kgですので、10kgも少ない体重です。20代女性で「やせ」に分類される割合は、20.7％となっており、女性全体の11.5％と比較して、若い女性に「やせ」が多くなっています。
若い世代の低体重は、健康上様々なリスクがあります。無理な食事制限は鉄欠乏性貧血や栄養失調を招きます。また、無月経や低血圧・不正脈となる可能性もあります。やせた女性が妊娠した場合、その子どもが小さく生まれやすくなることもわかっています。
さらにやせ願望が深刻化すると、拒食症や過食症といった摂食障害となる可能性もあります。摂食障害の多くは10代で発症します。原因は様々です。やせを称賛するような社会の風潮、心配症や完璧主義といった元々の性格、いじめや虐待の経験、不安な家庭環境などが複雑に影響していると考えられています。
まずは健康を維持できる適切な体重を知ることが大切です。緑黄色野菜やタンパク質をバランスよくとり、体を動かす趣味をもつなど、ストレスを解消する方法を自分なりに探してみるとよいでしょう。
ダイエット中の方は食べ物や体型、体重をコントロールすることで頭がいっぱいになっていることもあります。ダイエット以外のことを考えられなくなっているような場合は、専門科に相談するとよいでしょう。相談先がわからない場合は、摂食障害全国支援センターで相談できます。
「やせないと生きる価値がない、太るのが怖い、と思って必死になっていました。今もやせたい気持ちは変わりませんが、ちょっと異常でしたね」と渡辺さん。看護師のモモセさんが「自分でそう気付けたのなら良かったです。不安で辛い思いをしましたね」と言うと、渡辺さんとお母さんは、ほっとした表情になりました。