2023年3月の健康便り —メンタル—

緊張を和らげる

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 就職活動について相談したいと予約のあった大学3年生の大場拓也さんが、健康管理センターに入室してきました。スーツ姿で現れた就職活動中の大場さんは緊張している様子はあるものの、挨拶もきちんとして着席しました。
 相談室のキムラさんは、早速話を聞いてみましたが、自己分析や業界研究はよくできていて特に問題が無いように思えます。そこで「就職活動の何について相談したいのでしょうか」と単刀直入にたずねてみました。すると、大場さんは「今日のような1対1の面接でも緊張してしまうのですが、面接官が複数人いるときや、グループ面接だとさらに緊張してしまうのです」と言いました。「緊張が高まるとどうなるのですか」とキムラさんが聞くと、大場さんは「言葉につまってしまうことがあります」と答えました。
 「では今はどうですか」とキムラさんが確認すると、大場さんは「今も少しあります。喉や胸に何かつかえたような感じで口が乾きます。これがひどくなると声を出そうとしても、うまく出なくなってしまうことがあります」と話しました。
 いつもはどのように対処しているかを聞いてみると、「大丈夫」と自分に言い聞かせることで落ち着くことはあるとのこと。ただ、それでは落ち着かない場合もあるので面接がとても怖くて、そのために一層緊張してしまうとのことでした。

 そこで、キムラさんは自律訓練法という、自己暗示の練習によって段階的に全身の緊張を解いていく方法を試してみることを提案しました。自律訓練法による自己暗示で大丈夫というメッセージを増幅し、緊張を和らげることができるかもしれないとの説明に、うつむき加減で話をしていた大場さんは顔をあげ、興味津々な様子でキムラさんの話を聞き始めました。説明の後、手始めに簡単な自律訓練法を試してみた大場さんは、「少し喉や胸のつかえがほぐれたような感じがあります」と、相談室に入ってきた時よりも明るい声で言いました。
 「自己暗示の練習は回数を重ねることが必要なので、しばらくの間、継続的に相談室に来られますか」とキムラさんが聞くと、「ぜひお願いしたいです。これで少しは採用面接の緊張が楽になるかもしれないので」と言って、大場さんは来週の予約を取り、相談室を後にしました。

※自立訓練法は練習をすることで日常生活に取り入れることができるリラックス法です。安全に行うためには、専門の指導士や指導医に相談、指導を受けることをお勧めします。