2023年4月の健康便り —健康—

急性アルコール中毒にご注意を

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 大学4年生の伊藤悠斗さんは4月に行われる部活の新歓飲み会が憂うつです。4年生が3年生に「イッキ飲み」をさせて場を盛り上げるのが伝統だったと先輩方から伝え聞いていました。ですが、昨年までは新型コロナ感染拡大防止のため飲み会や合宿はできませんでした。同級生が今年こそ「イッキ飲み」で盛り上げるぞと意気込んでいるのを聞き、自分もお酒が弱いので、3年生のことが心配になりました。そこで、新歓飲み会の前に「イッキ飲み」の危険性と対処法について健康管理センターの看護師モモセさんに相談することにしました。

 短時間で大量にアルコールを摂取して、精神的、身体的に影響を受け、酩酊という一時的な意識障害を起こすものを急性アルコール中毒と言います。重症になると意識混濁、昏睡、血圧低下、呼吸困難、失禁、脱水、低体温などの症状を起こし、死に至ることもあります。他に嘔吐物による窒息死、足元のふらつきによる転倒事故や交通事故、海や川でおぼれる、気が大きくなりトラブルに巻き込まるなど、さまざまな危険性があります。
 急性アルコール中毒による救急搬送は、歓送迎会の時期や夏季、年末年始に多くなります。年代別搬送者数は20代が圧倒的に多く、飲酒経験が浅く自分の適量がわからない、場を盛り上げるために「イッキ飲み」をするなどが理由として考えられます。4月は特に、上級生から早いペースで多量のお酒を飲むよう強要される場合があります。これはアルコール・ハラスメントと言われ、暴力と同じなので絶対にしてはいけません。また、お酒は飲み続けると耐性ができますが、コロナ渦でお酒を飲む機会が減り、久しぶりの飲酒で急性アルコール中毒になる可能性もあります。
 もしも一緒にお酒を飲んだ人が眠ってしまう様なことがあれば、絶対に一人にせず、嘔吐物が喉につまらないよう横向きで寝かせて見守ります。体温低下を防ぐため、上着や毛布などをかけて暖かくします。また、ゆすっても呼びかけに反応しない、呼吸がおかしい、身体が冷たくなっているなどの様子があれば、すぐに救急車を呼びましょう。
 アルコール・ハラスメントは嫌がらせ行為、迷惑行為であり、人権侵害です。飲酒による暴力をなくすためには、相手に配慮した飲酒環境を心掛けなければいけません。

 「イッキ飲みなどで飲酒を強要し、急性アルコール中毒で死亡させた場合は罪に問われることもあります。みんなが楽しい大学生活を送るためにも、アルコールの問題はとても重要。私から学校に注意喚起をするように伝えておきますね」とモモセさん。
 伊藤さんは「急性アルコール中毒になった場合、部内で加害者と被害者が出ることになるのですね。部長に相談して、イッキ飲み以外の新しい方法で新歓飲み会を盛り上げることができないか考えてみます」と言い、部室に向かって走っていきました。

イッキ飲みは死をまねく― 急性アルコール中毒をなくそう!