2023年8月の健康便り —健康—

性暴力って?~性的同意について考えてみよう~

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 大学3年生の佐野愛梨さんはお付き合いしている彼のことで悩みがあります。今日はしたくない気分だなと思い、胸を触られ、そういう雰囲気になったときに「ダメ」と拒んではみるものの、結局、性行為を断れないのです。友達の酒井さんに相談すると「ニュースで同意のない性行為は罪になると言っていたよ。そういう時の同意のあるなしって大事なんじゃないかな」と言われ、びっくりしました。もやもやした気持ちでいると、酒井さんが健康管理センターの看護師モモセさんに聞いてみようと提案してくれたので、一緒に相談してみることにしました。

 性暴力とは、望まない性的な行為全てを指します。自分がしたいときは相手もOKと思い込んだり、本当に嫌がっているのだと気づかなかったりして性的な行為に及びます。「嫌だ」と思っていても、嫌われたくないから断れないという場合もあります。また、相手の気持ちに関係なく無理に性的行為に及ぼうとされた場合、本当に恐怖を感じると人は動けなくなり、声も出せなくなります。「嫌だと言わなかった」「抵抗しなかった」からといって、同意したという訳ではありません。強制性交等罪は「不同意性交等罪」と罪名が変わり、同意のない性行為は犯罪となることが法律ではっきりと示されました。
 同意なく性行為をした理由として多いのが、付き合っているからしてもよい、家に泊まったからしてもよい、キスをしたからしてもよい、確認したが黙っていたのでしてもよいと思った、などがあります。
 内閣府男女共同参画局の調査研究によると、性被害の多くは知っている人からの被害であり、まったく知らない人からの被害は1割程度です。加害者は仕事や家庭をもつ、普通に生活する人がほとんどです。男性も被害にあっており、性別や年齢は関係ありません。性暴力は支配の力が根本にあることで起こるので、どんな場合も被害者は悪くありません。
 自分の身体に関することを自分自身で決められる権利をリプロダクティブ・ライツと言います。大切なのは、いつ、どこで、だれと、どの様な性的な関係を持つかを自分で決められるということです。

 「お互いに相手の意思を尊重しあうことが大切よ。まずは彼に素直な気持ちを伝えてみたらどうかしら」とモモセさんは提案します。佐野さんは「勇気がいるけど彼に話してみます」と言い、酒井さんと3人で微笑みあいました。