2023年8月の健康便り —メンタル—

LGBTQをどう受け止めるか

イメージ

 大学3年生の徳永英雄さんが健康管理センターの相談室を訪れたのは、夏休みに入ってすぐのことでした。相談室の椅子に座ったまま、言いづらそうに黙っている徳永さんに「ゆっくりでいいですよ」とキムラさんが伝えると、「友達のことなんですけど…」と話し始めました。

 「4か月前にゼミで出会った拓馬くんという友人と、もう1人、自分が以前から親しくしている大和くんという友人がいるんですが、時々3人でも遊ぶ仲だったので、拓馬くんと夏休みの遊びの予定を相談している時に、大和くんも遊びに誘おうと提案したんです…」と言い、少し言いよどんでしまいました。
 キムラさんが話しやすいよう先を促すと、「拓馬くんは、誰かから大和くんは同性が好きなのだということを聞いたらしく、『好きにしたらいいと思うが、自分の関係のないところでしてほしい』と言って、遊びに誘うことを断られてしまって…。僕自身も初めて聞いたので驚きましたし…」と言ってうつむいてしまいました。
 徳永さんはその日はそのまま拓馬くんと別れて帰宅したそうですが、帰宅後に戸惑いが大きくなっていったと話します。拓馬くんの発言や態度に困惑しつつも、一方で、自分はこれまで深く考えたことがなかったと気づき、大和くんに今まで通り接することができるか自信が持てなくなってしまったということでした。

 キムラさんはまず、大変でしたねと声をかけました。そして自身も同じように接し方に悩んだことがあったと打ち明けました。徳永さんが驚いたようにキムラさんを見つめると、キムラさんは情けなさそうに笑います。
 「それで、どうしたんですか?」と徳永さんはたずねます。「知らない面がまだあったんだなと思って、相手の個性や特徴だと受け取りました。それを知ったからと言って私の知っているその人が変わってしまうわけではないですから」
 その言葉を聞いて、「自分もそう思います」と徳永さんは大きくうなずきます。
 キムラさんは続けました。「ただ、意図しないかたちで知ってしまったということは伝えました。隠しておきたかったことかもしれないので」
 それを聞いて、徳永さんはしばらく何か考えているようでした。そして、「大和くんと話してみようと思います。自分にとって友人なのは変わらないって思うし。また困ったら相談させてください」
 キムラさんはにこやかに「はい」と応え、相談室から帰っていく徳永さんを見送りました。