2023年10月の健康便り —健康—

腸内細菌と健康

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 「美紀さん、腸活って何かしている?」大学3年生の小林美紀さんは、学食でランチをしているときに友達に聞かれ、「えーっと…?」と言葉に詰まってしまいました。腸活ってよく耳にするけれど、実際はどんな効果があって、何から始めたらいいのかわかりません。すると、隣のテーブルに座っていた健康管理センター看護師のモモセさんが「おもしろそうな話をしているわね。私も混ぜてもらっていいかしら」と会話に加わりました。

 人間の腸内には約1,000種類の腸内細菌が生息しており、その数は約100兆個、重さは約1~2kgと言われています。これらの細菌が、バランスを取りながら腸内環境を良い状態にしています。細菌が集まる様子が花のように見えることから腸内フローラと呼ばれています。
 腸内細菌は悪玉菌と善玉菌、どちらにも属さない日和見菌の3つのグループで構成されています。悪玉菌は腸内で有害物質を作り出す菌ですが、肉類などのたんぱく質を分解し、便として排泄させる働きもあり、私たちの体に必要不可欠なものです。けれども高脂肪の食事やストレスなどで悪玉菌が増えると、下痢や便秘の原因となるだけでなく、様々な病気の原因になると言われています。善玉菌には、腸の運動を活発にする整腸作用があります。腸内を酸性にすることでアルカリ性を好む悪玉菌が増えるのを防いでくれるのです。他にも、有害物質を体の外に排泄する、免疫力を高めて感染を予防する、ビタミンを作り出す、血清コレステロールを低下させるなどの効果もあります。健康のためには腸内フローラを善玉菌が多い状態に整えることが大切です。
 そのための方法は2つあります。ひとつは、生きた善玉菌である「プロバイオティクス」を直接摂る方法です。ヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆、漬物、みそ、チーズなど、ビフィズス菌や乳酸菌を含む食品を継続的に食べると効果的です。もうひとつは、腸内にもともと存在する善玉菌を増やす作用のある「プレバイオティクス」を摂る方法です。野菜や豆、海藻、きのこ、果物などオリゴ糖や食物繊維を含む食品がよいでしょう。この両方を合わせて摂ることがより効果を上げるポイントです。

 「朝食をバナナとヨーグルトにする、ランチはみそ汁のついた定食を選ぶくらいなら私にもできるかも」と小林さん。「ヨーグルトは製品によって含まれる菌が違うから2週間くらい同じ菌を取り続けてみて、体調の変化を感じられるか試してみるといいわよ。腸内フローラは人それぞれだから、自分にあう菌を探すのも楽しみのひとつね」とモモセさんは言いました。デザートにヨーグルトを追加することにした3人は、足取り軽く売店へと向かいました。