2023年12月の健康便り —メンタル—

親の言うことが気になってしまう~共依存~

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 大学3年生の田中舞香さんは「このままでは大学院に進学できない…」と暗い顔で健康管理センターの相談室を訪れました。
 田中さんは将来研究者になりたいのですが、大学院進学を母が反対するため困っていると言います。相談室のキムラさんは、母親との関係を聞いていきました。

 田中さんは母が入りたかったこの大学への入学を目指して、母と二人三脚で受験勉強を頑張ってきました。合格を喜んだのもつかの間、徐々に母との関係に違和感を持つようになりました。母はサークル活動や友人関係、交際相手のことなど、なににでも口を出してきます。母から「あなたにふさわしくない」などと言われると、田中さんもそんな気持ちになります。卒業後の進路についても大手企業に就職し、結婚、出産して欲しいと言われました。 
 母が田中さんの言動に不機嫌になったり、気に入ってくれなかったりすると落ち着きません。最近は自分の考えがなく、まるで母の人生を生きているようにも感じます。「でも、母のことが大好きなんです。母の意見が気になって仕方ないんです…」と声を震わせて言いました。
 キムラさんは「田中さんとお母さんは、お互いが必要以上に依存しあっている『共依存』の状態なのかもしれませんね」と話し始めました。共依存とは、依存している相手との境界線がはっきりせず、相手の言動で自身の心の安定をはかるようになることです。恋人同士なら相手に執着している関係を愛と勘違いし、相手の顔色をうかがう不安定な関係になります。親子では、親が自分の不安から指示的になり、子どもの自立を妨げるようなこともあるのです。  
 キムラさんは「田中さんの感じている違和感は、田中さんが自分を軸にして生きていきたい気持ちの表れではないかしら。親離れ、子離れの時期にきているのだと思いますよ。人生を自分で選んでよい、でもそれは自分の行動に責任を持つことも含まれているの」と話しました。そして自分で考える時間を作り、お母さんと距離をとってみることを勧めました。
 「今までと違う田中さんを見て、お母さんは驚くでしょう。抵抗されるかもしれません。でも大丈夫。心配してくれる気持ちに感謝しつつ『自分の人生を、自分で考えたい。しばらく見守ってほしい』と言ってみてはどうかしら」との言葉に、田中さんは頷きました。自分を軸にして、自身の足で進んでいけることを願いながら、キムラさんは田中さんを送り出しました。