2024年4月の健康便り —メンタル—

新生活の心配事~消費者トラブルに巻き込まれたら~

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 ある日の講義終了後、大学1年生の本橋幸雄さんは、思いつめた表情で健康管理センターの相談室に向かいました。本橋さんが相談室を訪れるのは初めてでしたが、入学時のオリエンテーションで説明を受けていたので場所はわかっています。そこで相談室のキムラさんに話を聴いてもらいました。

<サークルに入ろうと思っただけなのに>
 大学生になったら絶対にサークルに入る、と決めていた本橋さん。入学式の後に開かれたサークル説明会に参加し、意中のサークルの入会希望リストに連絡先を記入しました。しばらくするとサークルの関係者だという男性から連絡があり、活動の詳細について喫茶店で説明を受けることになりました。ところが、男性はサークルの説明もそこそこに、「いい話があるんだ」と切り出します。どうやら株式投資で収益を得ているらしく、「値動きが予測できるUSBメモリを使えば簡単に利益が出る。学費をまかなうことも難しくない」と熱っぽく語り、本橋さんにUSBメモリを購入するよう勧めてきました。最初は半信半疑だった本橋さんでしたが、話を聞くうちに「自分で学費をまかなえれば親の負担が減る」と思うようになりました。USBメモリは30万円と高額でしたが、一人暮らしの初期費用として親が渡してくれた生活費を使って購入することにしました。「友人を誘えば紹介料として5万円もらえる」と言われたことも安心感につながったようです。
 その後しばらくして、大学内で「USBメモリの購入トラブルが続いている」との噂を聞いた本橋さんは、自分がマルチ商法に引っかかったのだと気づきました。しかし、生活費を使ってしまった手前、親には相談できず、どうしたらよいかわかりません。地元から引っ越してきたばかりでアルバイトもしていないため家賃や食費のことも心配です。
<困ったら、まずはだれかに相談を>
 落ち着いた様子で本橋さんの話を聴いていたキムラさんは、ひと通りの事情を確認したうえで、「大変でしたね」と優しく語りかけました。そして、クーリングオフ制度の対象となる可能性があることを説明し、消費生活センターでの相談を勧めます。そして、金銭的に解決できても、できなくても、親には報告するようにとアドバイスしました。
 「とんでもないことをした」と自分を責めていた本橋さんですが、キムラさんがつらさを理解してくれたことや具体的な対処法について助言してくれたことで、相談する前よりも気持ちが楽になりました。
 しっかりとした表情で「消費生活センターに連絡してみます」と相談室を後にした本橋さんを、キムラさんは優しく見つめながら見送りました。