2024年7月の健康便り —メンタル—

予期せぬ妊娠~望まない妊娠を防ぐには~

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 健康管理センターのドアの隙間から、中をのぞく学生がいることに相談室のキムラさんは気が付きました。ドアの近くには青ざめた顔で大学1年生の新谷奈々さんが立ちすくんでいました。キムラさんは、肩にそっと触れ相談室に入るよう促しました。相談室のソファーに座るなり、新谷さんは号泣し「赤ちゃんが…、赤ちゃんが…」とその先の言葉が続きません。キムラさんが「妊娠したのかな?」と問いかけると新谷さんは大きくうなずきました。

<大学生活を謳歌していたのに…>
 入学を機に一人暮らしを始めた新谷さん。サークルにも入り、大学生活を謳歌していました。年上の彼もできました。そして彼が新谷さんの部屋に泊まりにくるなどして自然なかたちで性行為に至りましたが、二人とも妊娠に関しては危機感を持っていなかったようです。
 新谷さんは、元々生理周期が不順だったため、新しい生活のせいで、リズムが狂ったのかなと軽く考えていました。ですが、生理がここまで遅れたことはなかったので心配になり、もしやと思い、妊娠検査薬を使ったところ陽性。両親にも友達にも相談できず、頭が混乱する中、意を決して彼に打ち明けたところ、別れを告げられてしまったのです。「もうどうしたらよいのかわからない」と机に伏して再び泣き始めてしまいました。
 キムラさんは、少し落ち着きを取り戻したころを見計らい、「この先どうしたいのかしら?」と尋ねると、新谷さんは「赤ちゃんは産みたいし、大学も卒業したい。でも彼に別れようって言われたし、両親にも言えていない。まず何をしたらいいのかわからない」と涙声で答えました。キムラさんは、新谷さんが自身の考えをきちんと持っていることを肯定的に伝え、まずは両親に自分の気持ちを打ち明けること、その次に産婦人科の受診を勧めました。大学は体調を見ながら通い続けることができること、体調が思わしくなければ休学し、出産後復学する方法もあることを伝えると、新谷さんの険しかった表情は少しだけ柔らかくなりました。
<正しい性知識を持とう!>
 キムラさんは、今の新谷さんには、彼との性行為に関して深く追求はしない方がよいと判断し、避妊方法などの話には触れませんでした。しかし、正しい性知識がないために、妊娠を回避することができなかったという大学生は少なくありません。また、男性にコンドームの装着を言い出せず、妊娠の不安を感じる女子学生は多いようです。
 大学生が男女ともに正しい性知識をもつこと、性を肯定的にとらえ直視すること、そして女性は男性に依存せず、自らの意志で避妊行動をとることが、これからの時代に必須であるとキムラさんは強く思うのでした。