2024年10月の健康便り —メンタル—

友人の悩みに気づいたら
~それってアカデミックハラスメント?~

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 ある日、健康管理センター相談室のキムラさんのところへ、大学3年生の綾瀬優希さんがやって来ました。綾瀬さんは、「同級生が心配で…、相談してもいいですか」と不安な表情を浮かべていました。ソファに座り、落ち着いたところで、綾瀬さんはポツリポツリと「同級生が研究室の教授からされていることが、アカデミックハラスメント(以降アカハラ)にあたるのではないかと心配になって…」と話し始めました。

<最初は、大げさに話していると思っていたけれど…>
 同級生の榎本さんとは授業が一緒になることが多く、次第に仲良くなっていきました。悩みや愚痴も言い合える仲になった頃、榎本さんから教授の話を聞きました。榎本さんは教授の研究の手伝いをしなければならず、研究発表が近づくと、夜遅くまで大学に残っているとのこと。最初は、そんな大げさな、と思っていましたが、最近、榎本さんの様子が少しおかしいことに気づきました。詳しく話を聞いてみると、教授の研究の手伝いのために睡眠時間が毎日2時間ほどしかとれておらず、しかも、研究の準備が思うように進まないと教授から「役立たず」、「成功させなければ卒業させない」などと言われていることを泣きながら話したそうです。
 その話を聞いて、綾瀬さんは、これはアカハラなのではないだろうか、自分はどうしたらよいのだろうか、と思い悩んで相談室を訪れたのでした。
<同級生を助けるためにできること>
 同級生の異変に気づき、どうにかしたいと考えて相談室を訪れてくれた綾瀬さんに、キムラさんは「相談室に来て話すということに勇気がいったと思います。話してくれてありがとう」と労いの言葉をかけました。そして、アカハラとは、教員が教育・研究上での権力を利用して学生の教育指導や研究活動に関する妨害やいやがらせをしたり、不利益を与えたりすることであるため、榎本さんはアカハラを受けている可能性があると綾瀬さんに伝えました。
 キムラさんは、まず、今の状況では、榎本さんがどうしたいのかがわからないことを綾瀬さんと共有しました。そして、本人が状況を変えたいと思っているのであれば、いつ・どこで・なにをされたのか証拠を集める必要があること、学内や学外にあるハラスメント相談窓口へ相談ができることを伝えました。
 綾瀬さんは榎本さんの力になりたいと考え、今の状態について相談できる窓口があること、証拠集めを手伝う気持ちがあることを伝えようと決めたようでした。
 本人からはなかなか言えないことでも、周りの人が気づくことによって、ハラスメントを受けている当事者が相談しやすくなるかもしれない、そうなってほしい、と願うキムラさんでした。