健康管理センター相談室のキムラさんのところへ、大学1年生の水野麻衣さんが訪れました。クリスマス前の浮足立った空気とは裏腹に、何やら浮かない様子です。話を聞くと、冬休みに控えているサークルの合宿を楽しみに思う反面、場の雰囲気に流されてお酒を飲まされてしまわないか不安に思っているようでした。
- <暗黙の強要はもしかして…>
- 水野さんの所属するサークルには、飲み会が好きでお酒に強い人が多く集まっているそうです。先輩から聞いた話では、合宿の夜には宿泊施設で飲み会が催され、泥酔するのを前提としてバケツやごみ袋が用意されるのだとか。その際、盛り上げる際に使われる掛け声が飛び交い、イッキ飲みで応じなければいけない雰囲気があるといいます。
「それって、もしかしてアルコールハラスメントでは?」と疑問に思ったものの、どこに相談するべきかわからなかった水野さんは、ひとまず健康管理センターの相談室を訪れたのでした。
- <断るのは悪いことじゃない>
- アルコールハラスメント(アルハラ)とは、飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為・人権侵害のことです。具体的には、飲酒の強要・イッキ飲ませ・意図的な酔いつぶし・飲めない人や20歳未満への配慮を欠くこと・酔ったうえでの迷惑行為などが該当します。アルハラを不快に感じつつ受け入れてしまう学生が多い中、相談室に来て疑問を素直に打ち明けた水野さんの行動をキムラさんは支持しました。そして、「急性アルコール中毒」で命を失うケースもあるため、アルハラへの心構えを持つことが大事であると伝えました。
まず、飲み会が始まる前に20歳未満なのでお酒は飲まないことを事前に伝えておくことです。すでに酔っている人には、飲めない人の真意は伝わりません。そのため、聞いてほしいことはお酒のノリがない時に伝えたほうが相手に届くものです。それでも強要されそうなときには、毅然と断ることも命を守るために大切です。「雰囲気を壊したくなくて、断ることにどこか罪悪感を抱いていました。でも、断るのは悪いことじゃないんですね」水野さんは納得したように呟きました。
- <いざというときは相談窓口へ>
- 「ないといいのですが…」と前置きしつつ、もし被害にあったときには、学内や学外にあるハラスメント相談窓口を利用して欲しいとキムラさんは強調しました。相談者の意思を尊重しながら問題解決を図る他、二次被害を防ぐための対策を講じることや、相談者が不利益にならないように対処することが可能だからです。
水野さんは、相談を通してアルハラへの心構えができたとともに、いざという時に頼れる場所があるということがわかり、安心して相談室を後にしたのでした。