大学1年生の杉村涼さんが、サークルの先輩、多田陽太さんに付き添われて健康管理センター相談室のキムラさんの元へ訪ねてきました。多田さんは「杉村さんは相談室の利用が初めてで不安なようなので同席してもいいでしょうか」とたずね、3人での会話が始まりました。
杉村さんは、大学進学と同時に一人暮らしを始めました。高校生時代と比べると家事やお金の管理など大変なこともありますが、自由な時間も増えました。大学の講義やサークル活動に加えて、バイトもこなし、充実した毎日です。しかし、最近、サークル活動中にたびたびぼーっとしている様子に多田さんが気づき、「大丈夫?」と声をかけたのをきっかけに杉村さんは相談室を利用することになりました。
- <小さな無理が続いて…>
- 杉村さんは学生生活に慣れることを優先するために、アルバイトについては週2~3回、昼間だけの希望で働き始めました。しかし、店長から「従業員が足りないから、夜もできるだけ入ってほしい」と言われ、少し無理をしてでも昼夜問わず出勤していました。また、サークルではみんなでやることになっている準備や片付けだけでなく、サークル室の戸締りなどを帰宅が遅くなっても率先して行っていました。杉村さんとしては、ほんの少しだけ無理をしている感覚でしたが、講義中の居眠り、バイト先でのミス、気分の落ち込みなどが増えていきました。講義や課題、夜のアルバイトをこなすために不規則な睡眠が続き、心身の不調につながってしまったようです。
- <自分のペースを大事に>
- 杉村さんから話を聞いたキムラさんは、不安がある中で相談室へ来てくれてよかったと伝え、まず、毎日のタイムスケジュールを確認しました。その結果、責任感の強さゆえに自分のペースを保つことが難しく、生活リズムの乱れが睡眠に大きく影響していると考えました。
キムラさんは、睡眠がしっかりとれないことによる集中力や免疫力の低下、抑うつ感の高まりなどの睡眠不足のリスクとともに、良い睡眠のためには“量と質とリズム”の3つを整えることが重要であると伝えました。そして、睡眠の量と質とリズムを整えるために、アルバイトのシフトやサークルでの役割などを見直し、自分のペースに合わせて時間を調整するよう提案しました。
多田さんは、サークルの先輩として、サークル内での杉村さんの負担が大きかったことに気づき、役割を決めてローテーションしていこうと伝えました。このように心身の不調の要因を一人で抱え込む必要はなく、周囲の人に頼ることで改善できる場合もあります。
杉村さんは少し明るい表情になり、「自分が感じていたよりも頑張りすぎていたと気づきました。できることから調整していきたい」と話しました。キムラさんは、充実した学生生活を送るために、睡眠の大切さを今の時期に知ってくれてよかったと思いながら、先輩とともに歩く杉村さんの後ろ姿を見送りました。