ある日、健康管理センター相談室のキムラさんのところへ、大学3年生の宮田奈央さんがやってきました。宮田さんは疲れ切った様子で「最近ショックなことがあって…。自分だけではどうしたらいいかわからないんです」と言いました。キムラさんは話を聴くために宮田さんを相談室の椅子に座らせました。
- <やめたいのにやめられない>
- 先日、宮田さんは画像投稿型SNSで、ゼミの友人の「ゼミのみんなと遊びに行ってきた!」という楽しそうな写真投稿を目にしました。そこには自分以外のゼミのメンバーが写っています。宮田さんは自分だけ誘われなかったことを知り、ショックを受けました。その投稿を目にした日から、また同じような投稿があったらどうしようと不安に駆られ、ゼミ生の動きを見逃すまいとSNSをチェックすることから離れられなくなってしまいました。授業の課題やアルバイト、別の友人と遊んでいるときにも、常に頭の片隅ではゼミ生のことを考えており、周りの人からいつもと違う様子を心配されてしまいました。SNSのチェックのために睡眠時間が削られ、ひどく疲弊もしていたのです。「こんなことはもうやめたいのにやめられない…」と途方に暮れていました。
- <SNSがすべてではない>
- 話を聴いたキムラさんは、SNSに時間を取られすぎて、日常生活に支障が出ていることを宮田さんと再度確認しました。その上で、SNSを見る時間を意識的に減らして生活のリズムを整えることを心がけるように提案しました。「今まで見ていた時間を急に減らすと、不安な気持ちが大きくなり、かえってストレスになってしまうかもしれません。無理せず少しずつ減らしていきましょう」と伝えました。そして一人で抱え込まず、心配してくれている周りの人とのかかわりを大切にして過ごすことも提案しました。
宮田さんは、「最近はずっとスマホの中ばかりが気になっていましたが、人間関係はSNSだけではないですもんね…」と呟きました。
SNSは他人の近況を簡単に知ることのできる便利なツールですが、投稿の意図や理由が受け取り手に伝わらないことも多いため、悩みの種になる場合もあります。
SNSから完全に離れて過ごすことは難しいですが、利用する人それぞれが心地よいと思える距離感を保てるように、と願うキムラさんでした。