大学3年生の前田将生さんは体育会バスケットボール部のエース。長身を生かしたプレーが得意です。ある日の練習中、突然胸が痛みだし、息切れがして苦しくなってしまいました。マネージャーに連れられて、健康管理センターへやってきた前田さん。看護師のモモセさんに受診を促され、呼吸器内科に行くと「気胸」と診断され、そのまま入院することになりました。
- <気胸ってどんな病気?>
- 気胸とは、肺に穴が開いてしまい、そこから肺の外側の胸腔内に空気が漏れ、肺がしぼんだ状態をいいます。いくつか種類のある気胸ですが、多いのは肺の表面にできた「ブラ(肺嚢胞)」が破れることで発症する自然気胸です。ブラが破れてしまう理由は分かっていません。身体的、心理的ストレスが原因であることが多いようです。10~30代の長身でやせ型の男性がなりやすいのが特徴で、毎年CO-OP学生総合共済の共済金支払い件数が多い病気のひとつです。
- <気胸の症状、診断や治療について>
- 突然起こる胸の痛みや息苦しさなどが代表的な症状です。空咳が出たり、首や肩、おなかの痛みを感じたりすることもあります。問診や聴診のほか、レントゲンやCT検査で胸腔内に空気があることを確認して診断します。
穴が小さく、自覚症状もほとんどない場合は、空気が自然に吸収されるのを数日間待ちます。空気の漏れが多い場合は入院し、胸の外からチューブを入れて胸腔内の空気を抜きます。空気の漏れが止まらない場合や、再発する場合は手術を行うこともあります。
気胸はしっかり治療をすれば、スポーツをすることは基本的に可能です。しかしスキューバダイビングなど気圧の変化を伴うスポーツはやめておいた方がよい場合があります。また、飛行機に乗る予定がある場合は主治医に相談しましょう。
胸にチューブを入れて肺の空気を抜く治療を受け、元気になった前田さん。モモセさんのもとに退院の報告にやってきました。「たまたまライバルチームのエースも俺と同じ気胸で同じときに入院していたんです。びっくりしました。同部屋の気胸の患者さんは、みんな20代前後で背が高くやせ型でしたよ。一緒にNBAの試合を見たり、バスケの話をしたりして、治療は大変だったけど楽しく過ごせました」と、明るく話す前田さんの様子を見て、ホッとするモモセさんでした。