2025年10月の健康便り —健康—

若者に急増中の耳のトラブル!
~ヘッドホン・イヤホン難聴って知ってる?~

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 大学2年生の後藤遼さんの目の前に、険しい顔をした母親が立っています。イヤホンで音楽を聴いていて、母親が呼ぶ声に気づかなかったのです。「最近、耳が悪くなっているんじゃない? 病院に行ったら?」と心配する母親の声を聞き流しながらも、大学に着いた後藤さんは、「耳が悪くなっている」と言われたことが頭から離れません。友達との会話が聞き取れなくて聞き返してしまうなど、ちょっと思い当たることがあったからです。そこで、健康管理センターの看護師モモセさんに相談してみることにしました。

<ヘッドホン・イヤホン難聴とは>
 最近、音楽や動画をスマートフォンで楽しむ人が増えています。ヘッドホンやイヤホンを使って、通学や勉強中に「ながら聴き」するのは当たり前。でも、その習慣が耳に深刻なダメージを与えているかもしれません。
 「ヘッドホン・イヤホン難聴」とは、長時間、大音量でヘッドホンやイヤホンを使うことで、耳の中の「有毛細胞」という音を感じる細胞が壊れて、聴力が低下する病気です。怖いのは一度壊れた細胞は元に戻らないこと。つまり低下した聴力は回復しないのです。
世界保健機関(WHO)によると、12〜35歳の若者の約半数、なんと11億人がこの難聴のリスクにさらされているといいます。気づかないうちに耳を酷使しているのです。
<ヘッドホン・イヤホン難聴にならないために>
  • 音量は控えめに
    WHOは、音量を75dB以下、週に40時間以内に抑えることを推奨しています。参考までに、掃除機が75dB、コンサート会場が110dBです。周りの会話が聞き取れる程度の音量が安全なレベルです。
  • ノイズキャンセリング機能を活用
    周囲の雑音があると、つい音量を上げてしまいがち。静かな環境で聴くか、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンを使いましょう。
  • 音量を制限するアプリを使う
    スマホで音楽を再生するときは、ボリュームリミッター・アプリを活用し、設定した値以上の音量にならないよう制限しましょう。
  • 耳を休ませる時間を作る
    1時間聴いたら10分はイヤホンを外して耳を休ませる。これだけでも耳への負担は大きく減ります。

 ヘッドホン・イヤホン難聴は、ゆっくり進行するため気づきにくいのが特徴です。「最近、人の話が聞き取りづらい」「耳鳴りがする」などの症状があれば、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
 「音楽や動画は楽しいもの。でも、耳は一生ものです。大切な聴力を守りましょう」とモモセさん。後藤さんが「耳が痛いです~」とふざけると、2人は思わず笑ってしまいました。