大学2年生の沢田耕次さんは、幼いころからいい大学に入るよう両親から言われ、勉強漬けの日々を過ごしてきました。努力を重ねた末、見事志望校へ合格。しかし、目的を達成した今、‘自分には何もない’という気持ちになり、しかも、大学には自分よりも優秀な学生がいることに焦りも感じています。
友達はおらず、人との関わり方にも戸惑いがありました。アルバイトも始めましたが、自分より偏差値の低い人間とは話が合わないと感じ、かかわらないようにしています。そんなある日、大学内で配布されていた健康管理センターの相談室を紹介するパンフレットを偶然手にし、思い切って相談室のキムラさんのもとを訪れることにしました。
- <自分の価値がわからない…>
- 相談室で沢田さんは、「小さな頃からずっといい大学に入ることだけが目標でした。でも、それを達成した今、自分には何の価値があるのかわからなくなって…。周りは能力の高い人ばかり。友達もできないし、どうかかわればいいのかもわからないです。アルバイトを始めても、話が合わなくて孤独を感じます」と、とめどなく話しました。
キムラさんは「これまで受験という長い道のりを、よく頑張ってきましたね。勉強に打ち込んできた分、張り詰めていた気持ちが緩んで、戸惑いや空しさが込みあがってくるのは自然なことです。今感じている不安は、次のステージに進んだからこそ生まれてきた気持ちだと思いますよ」と優しく語りかけました。
- <ゆっくりでいい、自分について考えよう>
- キムラさんとの話を通じて、沢田さんはこれまで「成績」や「偏差値」といった限られた指標でしか自分を評価していなかったことに気付きました。また、「自分は何のために学んできたのだろう?」という疑問が、うっすらと心に浮かんできました。そして、「自分の興味や関心に目を向けてみたい」「人とのかかわりの中に何か学べることがあるかもしれない」——そんな思いが、少しだけ芽生えはじめたのでした。
最後に、キムラさんが「これからもあなたが感じていることや考えていることを、少しずつ話してみませんか」と尋ねました。沢田さんは「ぜひお願いします」と答え、次回の予約を取って相談室を後にしました。
一人で抱え込まず、焦らず、自分のペースで、自分のことについて考えていこうと思えるようになった沢田さんでした。