2025年12月の健康便り —メンタル—

アルコールハラスメントにあわないために
~自分に合ったお酒との付き合い方~ 

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 大学3年生の菊池健介さんが所属するゼミでは、毎年のことですが、今月居酒屋での忘年会があります。菊池さんはお酒が全く飲めません。しかし、先輩たちはかなり酒好きなようで、急性アルコール中毒で救急搬送されたことを武勇伝のように語る人もいます。
 菊池さんは先輩から「もう成人になったんだし。お酒は慣れだから飲まないと!」言われ、忘年会当日どうしたらよいのかと思い、健康管理センターを訪れました。そして、相談室のキムラさんに「先輩からも言われているし、やっぱり無理をしてでもお酒は飲んだほうがいいのでしょうか」と不安そうに語りました。 

<もしかしてハラスメント?>
 不安そうな様子の菊池さんに対し、キムラさんは「それはアルコールハラスメントかもしれません」と伝えました。アルコールハラスメントとは、飲酒にまつわる人権侵害のこと。①飲酒の強要、②イッキ飲ませ、③酔いつぶし、④飲めない人への配慮を欠くこと、⑤酔った上での迷惑行為という「アルハラの定義5項目」(特定非営利活動法人ASKホームページより)があります。
 キムラさんは、先輩からの「慣れだから飲まないと!」という発言は、①や④に該当する可能性があることや、実際にアルコールハラスメントによる死亡事故もあることを伝えました。また、「お酒が好きで体に合う人もいれば、好きだけれど体に合わない人、嫌いな人など様々です。それは努力や慣れで変えることが難しいものもあり、無理をする必要は全くないのです」と伝えました。菊池さんはホッと胸をなで下ろし「お酒を飲みたい気持ちはあるのですが、飲むと毎回気分が悪くなってしまうのです。飲めないことに罪悪感を抱く必要はないのですね」と少し安心した様子を見せました。
<アルハラ対策のポイントは組織全体での意識向上>
 「でも、飲まないとノリが悪いと言われて先輩から嫌われてしまうかも」と再び表情が曇る菊池さん。キムラさんは、「先輩に直接言いにくいのであれば、ゼミの教授や学内・学外のハラスメント相談窓口に相談するとよいかもしれませんね」と提案しました。
 翌週、再び相談室を訪れた菊池さんは、「さっそくゼミの教授に相談しました」と明るい様子で話しました。ゼミ全体でアルコールハラスメント防止のための呼びかけをしてくれることになったそうです。また、今後は居酒屋以外での集まりも計画されるとのことでした。
 キムラさんは、「アルコールハラスメントを防止するためには、仲間や組織全体でハラスメントに対する意識を向上させることが大切です。お酒を飲む人も飲まない人も楽しめる会になるといいですね」と言って、笑顔で菊池さんを送り出しました。