2023年5月のコラム

コロナ禍はいったん収束!? 新入生諸君は、クラブ活動、サークル活動への参加を考えてみよう

大阪大学名誉教授
(前大阪大学保健センター教授) 
杉田 義郎

杉田先生の略歴はこちらより

 思えば、3年余り前の2020年1月30日、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言しました。その後、世界的な感染拡大の状況、重症度等から同年3月11日、新型コロナウイルス感染症をパンデミック(世界的な大流行)とみなせると表明しました。

 そのWHOのテドロス事務局長が先日、5月5日の記者会見で、新型コロナウイルスをめぐる世界の現状について、3年前に宣言した「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了を宣言しました。前日の4日に開かれた専門家でつくる緊急委員会の助言を受け入れたということです。テドロス氏は、ワクチン接種や感染により獲得した免疫力が高まったことで、新型コロナによる死亡率が下がり、医療システムへの負担が緩和されてきたと指摘。「ほとんどの国でコロナ禍の前の暮らしに戻ることができている」との認識を示した。一方、「これで新型コロナが世界的な脅威ではなくなったというわけではない」とも強調しています。世界では3分に1人のペースで死者が出ており、多くの人々が集中治癒室にいるとも指摘し、新型コロナウイルスは地球上にとどまるとして、「新たな変異株が出現し、新たな感染者や死者の増加をもたらすリスクは残る」と述べています。緊急事態の解除が意味することについては、「各国が緊急対応から、他の感染症と同じように新型コロナを管理する局面に移行する時期にあるということだ」と述べた。感染者の増加などの異変を察知すれば、躊躇なく緊急委員会を招集するとの方針も示しました。

 日本でも厚生労働省は4月14日に厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症を現在の2類から5類に移行させ、発症後の療養の考え方にも変更を加えることを発表し、5月8日に実施されました。つまり、今後は感染拡大を防ぐための私権制限を伴う措置などはとれなくなりますし、感染対策は個人の判断に委ねられることになり、季節性インフルエンザなどと同じ位置づけとなります。

 コロナと共に普段の生活を取り戻すということを選択したことになります。さて、大学生活を送られている学生諸君にとっては、新型コロナウイルス感染症に振り回された3年あまりの期間がありました。これから大学生活をスタートする新入生諸君が見ている大学は、その影響がまだまだ色濃く残っている状態であると言って良いでしょう。コロナ以前はどうだったのと聞いても、大学院生の人や教職員でないとその答えを知りません。特に、新入生諸君にとって関心の深い、クラブやサークル活動はほとんどコロナ禍で大きな負の影響を受けたと言って過言ではないでしょう。大学のクラブやサークル活動の醍醐味である、他大学との対抗戦や交流が非常に制限されてきました。試合や発表会が中止に追い込まれたり、応援の観客がいない試合や発表会が当たり前になっていました。

 つまり、コロナ禍の影響で、程度の差はあれ、学生自身が自主的に運営するクラブ活動やサークル活動は傷つき、かつての力を失っているかもしれません。新入生諸君がそのようなクラブ活動やサークル活動に参加することに魅力を感じないと傍観者的に思うことがあるかも知れません。しかし、何十年から100年前後の輝かしい歴史をもつクラブ・サークルも珍しくありません。まさに、大学の成立とともに歩んだ歴史があるのです。大学生として在籍する期間は短い期間かも知れませんが、先輩から後輩へとバトンが受け継がれていくことにも大きな意義があると思います。卒業後にOB・OGとして物心両面から支援することも、現役部員のバイタリティを引き出してきました。

 現存のクラブやサークルは、現役部員のためだけにあるのではなく、現役部員の活動・活躍は、OB・OGへの大きな楽しみであり、励みになっていることは間違いありません。関係性のある人々が生き生きと活動している姿を見る・聞くことは、学内外のOB・OGの「幸福度」を引き上げることでしょう。それらが大学の活力の一部を構成していることでしょう。そういう意味で、大学は、課外活動に対して様々なレベル(ハード・ソフト両面から)の支援をためらわずに実施していただきたいと思います。

 一方、最初に述べたように、新型コロナウイルスは変異を繰り返しており、最新のウイルスは感染力を増す傾向にあります。現状は、これまでのワクチン接種や感染で獲得した免疫力で重症化するリスクは高くないレベルを何とか保っている状態にあることは忘れてはなりません。若者は一般的に感染しても重症化するリスクが低いので、一番早く警戒心をなくすかも知れません。しかし、接触する人に合併症があったり、高齢者もいたりすると思うので、普段から規則的な生活や睡眠をしっかり取るなど、体調を自己管理して自然の免疫力を低下させず、感染しにくいようにするという習慣は継続してほしいと思います。これをコロナ禍が残した教訓として暗黙知にできれば、今後の人生のすばらしい贈り物となるでしょう。

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略歴

1973年 7月
大阪大学医学部附属病院神経科精神科 医員(研修医)
1976年 7月
大阪大学医学部附属病院神経科精神科 医員
1978年 11月
大阪大学医学部精神医学教室 助手
1996年 11月
大阪大学健康体育部 教授
1997年 9月
大阪大学健康体育部保健センター長(兼任)
2004年 4月
大阪大学保健センター長(併任)
2005年 4月
大阪大学保健センター 教授
2006年 4月
大阪大学医学部附属病院睡眠医療センター 副センター長(兼任)
2013年 4月
大阪大学 名誉教授
2013年 5月
大阪大学学生支援ステーション特任教授(非常勤)
2013年 6月
大阪大学キャンパスライフ支援センター特任教授(非常勤)
2013年 10月
学校法人関西学院保健館 学校医・産業医(嘱託常勤)
2014年 4月
大阪大学キャンパスライフ支援センター招聘教授(非常勤)
2017年 4月
学校法人関西学院保健館 学校医・産業医(非常勤)

資格

1973年 6月
医師免許証取得(第219558号)
1988年 4月
精神保健指定医(第7831号)
1955年 5月
医学博士(大阪大学)
2004年 1月
日本医師会認定産業医

所属学会

日本睡眠学会、日本スポーツ精神医学会(評議員)、日本時間生物学会、日本臨床神経生理学会、日本精神神経学会、日本脂質栄養学会、全国大学メンタルヘルス学会

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