2022年10月の健康便り —メンタル—

怒りのコントロール

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 大学2年生の田中紗季さんが健康管理センターの相談室にやって来ました。最初は静かに話していた田中さんでしたが、相談が進むにつれて語気が強くなっていきます。相談は家族が自分の気持ちを分かってくれないという内容でしたが、家族の不満を話すと感情が高ぶってしまうようでした。相談室のキムラさんは彼女の感情の激しさが気になり、「ご家族と話すときも今のような話し方なの?」と尋ねると、田中さんはハッとして、「実は以前から怒りっぽくて。家族ともぶつかってしまうんです」と言いました。

 家族からも「その怒りやすい性格をどうにかしないとね」「そんなに怒りっぽくてはうまくいかないよ」などと言われ、さらにカッとなってしまうとのこと。自分でもなぜそこまで怒りっぽくなるのか分からず、怒りをコントロールできないことに苦しんでいるようでした。お友達ともそれが原因でうまくいかなくなることもあったそうです。

 キムラさんは尋ねます。「怒りの持続時間はどのくらいだと思いますか?」
田中さんはうーんと考えながら「30分くらいですか?」
「実は、怒りの持続時間は6秒間と言われているんです」
田中さんは短さに驚き、「私、家族とは2時間位けんかしていますよ」と言いました。

 「長時間怒っているときは、一つの怒りが続いているわけではなく、怒るために次から次に怒る対象を作っているような状態なのです。それが分かれば、一つの怒りを乗り越えたら、そんなに怒る必要はなかったということに気付けるんじゃないかしら」
 「例えば、怒りが起きそうなときや起きてしまったときに、少し人から離れて時間を置くのはどうでしょう。トイレに行ったり、水を飲みに行ったりするのが効果的です。深呼吸をしたり、数を数えたりするのもいいと思います」

 「怒りという感情は、人間の感情の中で唯一何かを壊してしまうことがある感情なんです。壊れるのは、物だったり、怒りの相手や関係性だったり、もしくは自分かもしれない。怒り自体は悪いことではなくて、人間に必要な感情です。怒りが行動の原動力になることも多いので、自分の怒りをどんな風に出していくかが大事になりますよね」

 キムラさんの話を聞いた田中さんは「わたし、大切な人や自分を傷つけないように6秒我慢してみます。怒りをコントロールしていきたい…」とつぶやきました。「意識してやってみることで、少しずつ怒りをやり過ごせるようになると思います。また今度、お話を聞かせてくださいね」
 「はい!」田中さんは丁寧にお辞儀をして相談室を後にしました。

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